物語中にレーシックが出てくる小説です。
施術までの過程や視力回復のイメージを伝えます。

- いつも日曜の朝には、犬の散歩をするパピ兄(主人公)。彼が立ち寄る公園ではあるスポーツが行われていた。ひょんなことから参加メンバーになったパピ兄だったが、かなりの下手っぷり。でもだからこそ、憧れの姫野さんの側にいれる。そんなあるとき、チームリーダーである西脇のジジイからレーシックを勧められた……。はたして、第1ゲートは通過できるのか?
- 【登場人物】
- 僕(パピ兄)
- -主人公。33歳のシステムエンジニア。
- 姫野春子
- -ヒロイン。62歳、未婚。
- 西脇のジジイ
- -ゲートボールチームのリーダー。76歳。
- ドクター小松
- -眼科の院長。底抜けに明るい。
- トム次郎
- -犬(パピヨン)。お行儀がいい。
太陽がギンギンに照りつける、目の眩みそうな青空の下、僕は大きく深呼吸をした。
この1打に、すべてがかかってる。
「絶対入れろよ。ボールをよく見て、ド真ん中に当てるだけでいいんだ。簡単だろ? もし入らなかったら、『嫌でもモテる30の秘訣』を最初から最後まで一生懸命立ち読みしてたってこと言うぞ。そんなことバレたら、もう男として終わりだ。さ、ビシッといこう、ビシッと!」
打席に入る前、西脇のジジイは僕のケツを叩きながら、そう脅しをかけた。
ひどい話だが、僕には言い返すことができない。大型ルーキーと言われてはや半年。僕はまだ試合で1点もとることができずにいた。恋愛系の自己啓発本を読んでいたのも、残念ながら本当だ。しかもすでに西脇のジジイはこのことを言い触らしていて、チームの中で周知の事実となっていることも知っている。
ここらへんで見直してもらわないと困る。この1点をとれば、僕らのチームが勝てるのだ。
でもまた僕は外すだろう。
「外したって、誰も文句なんて言わない。大丈夫よ」
ふいに横から、あたたかな天使の声がした。
子供に絵本を読み聞かせる図書館員のような穏やかさと、優しさ。そして薔薇のような艶っぽさが同居している声。
姫野さんの声だ。
そうだ、どうせ外すのに何を僕は緊張してる?
僕はボールをじっと見て、打った。やっと打った。
「第1ゲート、通過!」の声を心の中で響かせながら。
カツーン
どうやらボールの真ん中には当たったようだ。しかしボールはゲートを大きく外れ、そのままコートの外まで勢いよく転がっていく。飛んできたボールをよけようと慌てて体を傾かせた太っちょの円井さんが、ドデンとこけた。
「ホームランやね!」
ゼッケン4番、山谷の奥さんが、満面の笑みで喝采をあげる。少女のように飛び跳ねてさえいた。僕がミスしたことが、楽しくて仕方ないらしい。
ゲートボール界の大型ルーキー、メタボの33歳。
いまだ第1ゲート通過できず。
- 前のページへ
- 次のページへ





